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株式会社bitFlyer:企業インタビュー

更新日:1月21日

株式会社bitFltyer 内部監査部長 渡辺 知樹 氏


部員紹介


内部監査.com(以下、N): 本日は取材を受けていただき、ありがとうございます。まず bitFlyerという会社について教えてください。


渡辺(以下、W): こちらこそ、いつも貴社のサイトの記事や資料を活用させていただいています。株式会社bitFlyer(以下bF)は、米系投資銀行でトレーダーやシステム開発をやっていた創業者2名が、仮想通貨〜現在の法的な呼称は「暗号通貨」ですが、敢えて当時の呼称を使わせていただきます〜とその土台にあるブロックチェーンの技術に魅せられて始めたベンチャー企業が原点です。



その後、その理念や技術に興味をもったブロックチェーンや仮想通貨、またフィンテックに興味のある技術者やマーケター、金融事務等の人材が集まってきて現在の組織体制になりました。


そんな中で、現在の内部監査部は、規程等を整備して2018年の10月から現行の体制になりました。人の出入りは何度かありましたが、現時点では大手金融機関で経営に携わっていた執行役員をトップに、金融機関や監査法人、コンサルタント出身者等、総勢5名でやっています。メンバーの取得資格としては、CIA、CISA、CFE、CAMS等のホルダーがおります。監査以外にも監査等委員会の事務局も兼務しているため、社外取締役の方へのレポートやコミュニケーション、監査等委員会の開催も対応しています。


全員熱心で、また1線での現場の経験やクライアントビジネスの経験を持ち、何をすべきか自律的に考えて先回りして動ける人ばかりで、機動力の高い、攻撃的な監査部になっています。自分自身はスキルや経験もある程度は必要ですが、それ以上に常に学ぼうとする姿勢、好奇心の強さ、お客様や他部署を含め人をサポートし、会社をよくして行こうとする思い遣りが長く一緒に働くには重要だと思っているので、かなり理想的なチームだと思っています。



新しく設立された監査部の経験、苦労


N: そもそも新しい会社ということで、2018年の後半から現在の体制になったということで、いろいろ大変だったと思いますが、どのように体制を整備してきたか教えてください。


W:フィンテック業界に詳しい方はご存知かと思いますが、当社は2018年6月に、金融庁から業務改善命令を受けました。それまで関連法規がなく、ある意味野放図だった仮想通貨の世界に、後から資金決済法や金融商品取引法といった、法制度の整備の網が追い付いてきたのですが、それに対し、当社は意識や体質を急激に軌道修正できなかったということでしょう。でも、それからはとにかくお客様重視、コンプライアンス最優先の大方針の下、当社は経営管理体制の整備を進めてきました。


それまでもコンプライアンスや監査機能はなかったわけでないのですが、わずか数名の担当者が実質兼任で多岐に渡る様々な事案に試行錯誤しながら対応し、実効性や網羅性という意味では残念ながら手が回っていない状況が続いていました。


その後、検査時の金融庁の検査官の方々との対話等を通じ、いわゆる3線管理体制にもとづく、金融業者としてのガバナンスの仕組みの根本的な見直し、整備が必要と痛感し、あらためてそれこそ全社一丸となって、管理態勢の再構築に取り組んできました。


当初は、経験者が少ないことでどのような方向性を目指すのかのイメージが全社的に共有されていなかったこと、また急いで構築した体制で考慮不足や漏れもありました。あとは、自分では金融業界のコントロールとしては常識だと思って提案した改善対応策が理解してもらえず、根気強く説明したり。たとえば形式要件や説明責任の報告や情報連携のためにやるタスクというのは感覚的に消化できないようで、「それに何の意味があるのか?」という疑問をあちこちでぶつけられました。


お客様のためにサービス品質を上げること、お客様の資産を守ること、株主への説明責任、監督官庁や外部監査へ適正なビジネス運営をしていることを示すこと(これも説明責任ですが)等、金融業が持たないといけない高い倫理と責任、それを実現するガバナンス態勢の整備について、繰り返し説明しました。


N:では、なかなか改善は進まなかったんですか?


W:いえ、真面目な人ばかりの会社なので、必要と分かれば関係者全員が頑張ってやってくれていました。ただやはり知識や経験の問題で、本来のリスクとコントロールの整合性という意味では合わないことに極端に時間を掛けていたり。無駄なリソースを一切使えない状況で、何を、どのくらいの頻度で、どこまでやれば監査人として必要十分な改善はできた、と判断できるのか。それをゼロから考えるのは、自分にとっても難易度の高いチャレンジではありました。件数は大幅に減ったとはいえ、今もチャレンジは続いているのですが(苦笑)。



という感じで、当初はいろいろあったのですが、個々の監査や日々のモニタリングを通じて、かなり改善や精緻化が進んできているとは思います。その意味では、改善命令から会社としての土台を作り、命令解除に行くまでに、内部監査として一定の貢献はできていたのではないかと思っております。


N:かなりお忙しそうにいろいろ対応されていたのを思い出しますが、結果的には業務改善命令は約1年後に解除されたのでしたね。


W:はい、2019年7月に解除されました。約1年に及ぶ業務改善命令への対応、具体的には内部管理体制のデザインと整備を監視したり助言したり、そしてその実効性を何度も評価するというのは、なかなか経験できないことで、かなり大変でしたが、今となってはいい経験にはなりました(苦笑)。監査人として本来の独立した立場でのリスクの評価や監査計画の立案、モニタリングするポイントの特定をしていく訳ですが、やはり経営者の目線を想定した場合、経営課題として、(改善命令の)指摘事項でもあった適切な役割と権限の分離やコンプライアンス、またフィンテック企業としてのシステムリスク管理態勢や情報セキュリティ全般の態勢強化が大きなテーマでした。


こちらについても通常監査で課題を可視化しつつ、委員会やその他主要な会議のモニタリング等で、どこに課題があるのか、対応が遅れている場合は何がボトルネックになっているのか、金融機関として何をしないといけないのか、何より小さい会社で限られたリソースを有効に活用するために、どのような優先度でまずはどのレベルまでを妥当と考えて対応していくのか等、時には監査部内で議論したり、また部門横断的な人員で議論したり。さらに金融庁の方に進捗を訊かれることもあり、何がポイントでそれに対して監査人としてどう評価するのか、適切に状況をお伝えできるよう整理して回答したり。大きな会社にいてはなかなか考える機会のなさそうな様々な条件を考慮しての監査活動でした。


新しいテクノロジーへの取組み


N:従来の金融機関にない、暗号資産の世界独自の難しさとかはありますか?


W:大筋では、取引システムや非対面のお客様へのサービス、事務の部分はオンライン証券会社に近く、また資産をお預かりする点や世界中のどこにでもコインを送れる金融インフラという側面は、銀行に近い構造です。



この業界の監査の難しさとしては、上記のような既存金融にない、ブロックチェーンやウォレット、その本体である秘密鍵の適切な管理と保護、これはタイムリーに正確な処理をするという課題と、ご承知のようにハッキングで大量流出するリスクもあるので、非常に高度なセキュリティ対策が必須です。


そのセキュリティ対策が十分に実効的かを確認しないといけませんが、高度な機密情報なので監査する側の情報管理も細心の注意を払わないといけません。具体的には資料は預からない、またインタビューの記録なども普通の監査部の共有フォルダーではなく、パスワードを掛けてさらにプロジェクトに対応するメンバーにしか見えない場所に置くなど。


また暗号資産独特の分別管理の考え方等にも、この業界独特の難しさがあると思います。証券業のようにお客様持ち分の資産は信託銀行に移動しておく、というような目に見えて分かりやすい振分けができない中で、どのようにお客様の資産を明確に分けて安全に管理するのか。加えて、法令に準拠するため、取引システム上のホットウォレットにある暗号資産は自社分とする、とか取れるリスクや利便性のバランスを見極めつつ、自己資本規制にも対応するといった難しいバランスで運用される日々の管理業務をどう評価するのか。


あと、毎回困るのは、小さな会社で資金やリソースが潤沢な訳ではないので、いかに実効性を確保しつつ効率よく対応するか、過去の指摘への対応とムダや重複がないよう、また一貫性を持たせるよう、どのようにバランスを取るのか、という課題も、従来の大手の金融機関で働いていた時にはなかったチャレンジです。


今後の目指す方向性


N:まだまだやることはたくさんありそうですね。最後に、今後御社の内部監査機能をどのように強化していきたいとかビジョンはありますか?


W:規模は小さいのですが、ある意味、取引所という社会インフラを運営している以上は、やはりお客様に安心して気軽に使っていただける信頼性を向上させる必要があります。そのために、愚直に取引サービスや環境の品質や安定化、そしてリスク管理やガバナンス態勢の精緻化、高度化に取り組んでいく、それに尽きると思います。


そのためにも、合理的な監査を進め、監査部の言うことは妥当だと納得感をもってもらうこと、また監査人個々の勉強や情報収集も含め、何をどこまで取り組めば有効なのかまでサポートできるような、もっと実戦的なチームになり、しっかりと現場の背中を押していきたいと思っています。


幸い、地力が高く、目的意識を持って個々の事象に合理的にアプローチできるメンバーばかりなので、幅広くこの会社や業界の事例を知り、知識を深め、試行錯誤しつつ経験値を高めていくことで、もっともっと強い監査チームになっていくと確信しています。

有り難いことに、当社は昨年、今年とお客様の預かり資産の規模で国内トップになることができました。これからもこの業界の草分けとして、お客様の大事な資産を安全にお預かりし、安心してご利用いただけるよう、そのサービスを支えるシステム、事務、マーケティング、コンプライアンス、リスク管理、財務経理等が適切に運営され、リスクが適切に低減化され、その結果としてより品質の高いサービス提供ができるよう、一層の見直しと管理態勢の精緻化・高度化を推し進めていきたいと考えております。




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